剣姫―グレイスリング―


 ねじまき少女と一緒に新刊で買ってあった、ハヤカワFT「剣姫―グレイスリング―」を読了。



「ハヤカワオンラインのページ」
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/70533.html



剣姫―グレイスリング (ハヤカワ文庫 FT カ 6-1)

剣姫―グレイスリング (ハヤカワ文庫 FT カ 6-1)



書名:剣姫―グレイスリング―
著者:クリスティン・カショア
訳者:和爾 桃子
ISBN:978-4-15-020533-1
刊行日:2011/05/20




 海外産ライトノベルでした。
 非常にベタなファンタジーだったんですが、直前に読んでたねじまき少女が個人的に今ひとつだったので、却って安心してさくっと読めました。
 文章量同じ位なのに、こっちは1日で読み終わったからなぁ。


 主人公はウェスタ-、ナンダー、エスティル、サンダーの4国に囲まれた、ミッドランド王国の王女カーツァ姫。
 この世界、一部の人間は左右の目の色が違うオッドアイで産まれてくるのですが、オッドアイの人間は“賜持ち”と呼ばれ何らかの魔法的な特殊能力を生まれつき一つ持っています。
 とりあえず…まんま、魔法の国ザンスの一人一つの魔法と同じ設定と思って間違いないようです。
 で、主人公のカーツァも賜持ちなんですが…その特殊能力は“殺しの賜”キリングハンドです。
 やんごとなきお方にはかなり不釣り合いな代物です。
 おかげさまで、幼少のみぎりにセクハラかましてきた親戚を弾みで殴り殺して以来というもの、小物臭立ち上る現ミッドランド王、ランドから“王直属の処刑執行人”扱いで国中、王の不興を買った者ども(主に貴族)達に対して言われるがままに粛正を行う日々…
 オッドアイが目立ちすぎる為、街を歩けば、一般人は悪鬼羅刹を見るよォな目でみんなヒソヒソ囁くし、貴族を訪問すれば漏らしそうになりながら命乞いする始末。
 しかしながら、流石に欠片でも倫理感を持っていれば、そんな生活には嫌気がさす訳であり、カーツァはお供のイケメン金持ち貴族、ギドンと(実質諜報機関長官の)近衛隊長、オール、そして、幼なじみのミッドランド王子、ラフィンを仲間に引きずり込み、密かに世直し組織「秘密諮問機関」を組織、粛正の旅の合間合間に、世直しにせいを出すのであった…


 主人公の置かれた立場は結構ヤバいんですが、どこか、登場人物達の言動とか態度が気楽というか余裕があるんで…最初は


『少女水戸黄門伝説』とか、


『さがれ! さがれ! さがりおろう! (クロス・ソード!) 』


的なナニかが始まっちゃうのかと思いましたヨ、ええ。
 後半に行くに従って、流石にそう気楽な調子じゃ居られなくなる訳ですけどもね。
 多分この小説、鈍感姫様がむしろ嫁にしたい気の付くイケメン相手に恋愛するのがメインなんだろうなぁとは思うんですが、それ以外のファンタジー部分がちゃんと書いてあって面白いです。
 基本的に、外道はマジ外道な奴も居ますが、基本的に主人公の周りの人達いい人ばっかだしネ。
 読んでて気分悪くならないのでいいです。
 世界観というか雰囲気も、マーセデス・ラッキーのヴァルデマール年代記辺りに較べれば全然軽めだし。
 気楽に読めますね。
 願わくばフェミ小説臭がこれ以上キツくらないで続いてくれる事を祈りたいトコですね。
 …続き出るのか?
 今日日のハヤカワは出し逃げしまくりだからなぁ。











<以降、ネタバレを含む…?>














 展開としては、ホント、


『最初にいけ好かないイケメンがチラ出する → 攻略可能フラグ』

『最初から手近に居るイケメンはかませ犬』


『主要な敵に鬼畜ペド犯罪者が居る』


『本来マッチョヒーローがやっていた役割をにヒロインが居る為、イケメンはヒロインの役割を持たされ嫁化している』


 等々、非常に女性作家さんの小説のお約束的な部分が押さえられている感じ。


 とどめが、


『結婚はしたくないけど、イケメンとは付き合いたい』


だからなぁ。


 今回とんでもないチート能力持ちだった、ラスボスのモンシー王はあっさりと片付けられた訳ですが、続刊ではランド王討伐のミッドランド編なのかな。