ねじまき少女(上)、(下)


 新刊で適当に買っておいたものの、放置してあった「ねじまき少女(上)、(下)」をようやく読了。


ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)

ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)





 本来の出来とか、そういう評論的なナニかに関係ない、俗物的な娯楽小説読みの個人的な感想で言えば、「はずれ引いた」で終了。
 娯楽として楽しく読めなかったので。
 元々、散漫な群像劇は苦手な部類だし。




 ものとしては、暗黒未来社会派小説。
 技術者…いや、マッドサイエンティスト最強、最高!ってとこですね。
 サイコなマッドサイエンティストが大勝利な小説って(ギャグ、コメディでもなければ)正直ニガテなので、それもマイナス印象か。


 遺伝子改造がもたらした日本製の害虫が作物を食い荒らし、カメレオン能力のある“チェシャネコ”が在来の種族達を一掃する勢いで蔓延り、遺伝病や害虫に耐性のある“新製品”を作りだす西側の企業が破綻する国を呑み込みながら覇権を争う世の中。
 害虫や疫病は刻々と進化し続け、常に作物は遺伝子を魔改造した“新製品”を作り続けなければまともな収穫は不可能。
 石油エネルギーは枯渇し、軍需物資は僅かな石炭、主要な動力はメタンガスと、メドゴントと呼ばれる遺伝子改造された象、そして、ファンタジックにエネルギー効率の良いねじ巻き。
 マレーシアではグリーンバンド(イスラム原理主義者?)が(多分)華僑を虐殺し、西側諸国では、キリスト教自然主義が混じった様な過激宗派、グラマイト派が鎖国主義と“自然で無いもの”の破壊を叫ぶ…
 西側の遺伝子企業のスパイ(カロリーマン)が暗躍し、“新製品”開発の為の前時代の遺伝子(種子)を奪う為なら国の転覆、テロ行為(武力介入、食料汚染の遺伝子をばらまく)もじさない。
 そんな世界の中にあって、食料鎖国をして国体を保っているタイ王国が舞台。

 
 物語としては、新型ねじまき工場のオーナーのすげ替えとして、新しくタイに赴任してきたアンダースンが、街の市場で「ン・ガウ」と呼ばれているライチ的な味の果物を見つける辺りから始まります。
 遺伝病に完全耐性を持ち、西側の遺伝子企業の製品でも無いソレは、タイを独立国たらしめている膨大な種子バンクに迫る手がかりになると思われた…


http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11809.html


<“ハヤカワオンライン”サイトから引用開始>


ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞/キャンペル記念賞受賞!〉 『ニューロマンサー』以来の衝撃!――グレッグ・イーガンテッド・チャンを超えるリアルなビジョンを提示した新時代のエコSF


<“ハヤカワオンライン”サイトから引用終了>


 グレッグ・イーガンテッド・チャン氏らの著作を読んだ事は無いですが…わざわざニューロマンサーを引き合いに出さなくていいのになぁ。


 ネットで検索かけると、好感触な感想がひっかかるので、SF教養のある方々には面白いのでしょう。
 ネタを分析的にコレは、アレのアソコから…とか、いや、それよりアソコから…とか。


 ちなみにタイトルになってる“ねじまき少女”は日本製のバイオドロイドでした。
 まぁ…“フェラーリよりも高いお人形”って奴ですね。
 しかし…熱帯でちょっと全力疾走しただけで脳が煮えて死ぬ程体温が上がるっていう仕様は、アレだなぁ。
 ついでに、そのフェラーリよりも高いお人形への日本人オーナーの扱いが、北海道で1シーズン狩猟したら、狩猟犬をそのまま棄てる不良ハンター並とか…正直ニポンジンのお人形への執着心をナメてるとしか思えませんな。
 何故かねじまき達の崇める守護神が“水子地蔵”ってのもナニですが、地蔵菩薩じゃなくて…?とか思ったけど、分かっててあえて水子地蔵にしてるなら、ある意味凄いセンスな気も。
 ヒロイン的扱いででてくるねじまきのエミコの回想で出てくるねじまきの教育施設が、芸妓さんの稽古事のにおいがするとか。
 わざわざ日本製にしたり、そういうネタにするんなら、いっそのこと“ねじまきゲイシャ”とかにしといた方が向こうではウケがヨカッタんじゃなかろうか?
 日本にせよ、タイ(というかアジアネタ全般)割と分かっててネタっぽく書いてるのかも知れませんけど。
 著者は中国で暮らしてた経歴があるようですので。
 でも、トンデモ日本なら、やっぱりチバシティ辺りの方がまだ好きだなぁ。