ミストボーン −霧の落とし子−


ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)


発行所:早川書房(ハヤカワFT)
書名:ミストボーン −霧の落とし子−
   [1]霧の帝国
著者:ブランドン・サンダースン
ISBN:ISBN978-4-15-020495-2 C0197


 通勤時間を使って読了。


 取りあえず、この巻では面白かったです。
 この巻では…というのは、例によって原書1冊を分冊する分冊商法の1冊目だから。
 隔月で1冊ずつ出版され、3冊で1部が終了します。
 次回の発売は7月となり、その次は9月かな。
 なので、とりあえずこの1冊ではお話は終了しません。




 舞台は“支配王”と呼ばれ、不死の神と同一視される程の絶対君主に支配された“終(つい)の帝国”。
 貴族達は、スカーと呼ばれる賤民種族をこき使い、痛めつけ、めぼしい娘が居れば慰み者にした挙げ句に殺害してしまう様な、ちょっとダークファンタジーな中世世界。
 多くのスカー達は絶望に包まれ、支配されるまま、だくだくと生活しています。
 それだけだと、なんだか読んでてイヤになってくる感じの世界でも、貴族連中に対して一発喰らわしている奴らも居たりします。


 ソレは…盗賊。


 貴族相手に詐欺や、文字通りの盗みで一発喰らわしているわけですが…しかし、連中も結局、貴族の富のおこぼれをあさっているだけだったりします。
 大体、連中、自分の為なら呼吸をする様に仲間を裏切る連中なので…
 では、ヒーローは居ないのか?


 いえ、ちゃんと居ます。


 それは、霧の使いとして知られる、魔術、というか、錬金術の秘技を会得した盗賊達。
 合金術を呼ばれるソレを駆使する彼等は畏怖され、他の盗賊連中とは一線を画した存在です。
 金属をぐいと呑み込んで燃やし、空を跳び、霧を見通し、心を操り、身体を強化する。
 正に超人。
 しかし、当然その能力故に、帝国の聖職省の鋼の尋問官を初めとした、危険な敵に激しく駆り立てられ続ける一生を送り、大抵は畳の上で死ぬ事はできません。


 まぁ、普通に考えて重金属をぐいぐい飲んでるだけで、ふつーの人は死ぬと思いマスが。


 物語の大筋は、支配王を憎悪する伝説の盗賊ケルシャーの帝国を揺るがす途方もない計画に、しがない盗賊の小娘ヴィンが巻き込まれていくというものです。


 しかし、ピカレスクヒーローのケルシャー(カオティックグッド)は兎も角として、小娘のヴィンは、やった目鱈に虐待されて育った為、人を信じる事自体を知りません。
 彼女の昔の保護者だった兄は、妹が娼婦に身を落とすことなく生き延びる事が出来るようにと厳しく教育するのと同時に、殴る蹴るの家庭内暴力がワンセット。
 ついでに、彼女を見捨ててどっか行ってしまい、残されたヴィンは借金で首が回らない状態。
 そんなこんなで、精神的に異常にたくましく育った彼女が、広く世界とふれあい、実は、他の人間が100%裏切る連中ばかりじゃ無いと理解する日になるのでしょう?
 そんな、成長物語っぽいテーマも入っていたり。
 ちなみに、ヴィンは地下世界で16まで生き残ってきている程有能なので、読んでて、余り、若さ故のイタさを感じる部分はありません。
 …人の親切心を全く信用してない以外は。


 それにしたって、別に、悪く取ると言うよりは、親切にされると信じ切れなくて戸惑う、あるいは、裏切られて絶望したくないが故に予防線を張っている感じなので、そんなもの凄くスレた感じでは無いです。


 …チョット野良猫みたいな感じかも。


 とりあえず、設定もキャラクターもシナリオも割と気に入ったので、続巻も購入決定です。


 しかしながら…分冊されてる後2冊は出ると思うんですが、その後ってちゃんとでるのかなぁ。
 ここんとこ、最初だけ出して、後は知らんぷりっていうのが多いからなぁ、ハヤカワ。
 というより、あんなのを続巻出して、あっちを打ち切りするのΣ
 そんな展開が多い様な…ま、ソレは此方の趣味に照らしてるだけなので、アレなんですが。


 少なくとも、死せる魔女が行く、の続きは出して欲しいよなぁ〜
 第一部だけじゃ、設定とキャラの説明が終わっただけの様なものだし、キャラの背後関係に至っては、引きだけしか無い。
 あれは魅力的な箱庭なのに。